ギターは手で弾くものではない
2022/01/23
週刊少年マガジンで連載されていた「将太の寿司」と言う漫画があります。
主人公、関口将太は寿司職人です。
彼は、とある寿司のコンテストで優勝するべく努力をしていました。
そんな行き詰まった時、友人である渡辺久美子さんから手紙が届きました。
渡辺久美子さんはピアノでウィーンに留学していました。
彼女もまた、留学先のウィーンで挫折し、落ち込む日々を送っていました。
レッスンに行けば、先生には怒られ、留学仲間からは笑われて心底落ち込んでいました。
彼女は落ち込んだ時、幼い頃大好きだったシューマンのトロイメライを弾きました。
トロイメライを弾いている時は心が落ち着き、慰めてくれるように思いました。
トロイメライを弾く彼女をピアノの先生は影から見ていました。
暫くして、門下の発表会が開催される事になりました。
彼女以外の人はリストの超絶技巧練習曲や、プロコフィエフの2番を弾くと口々に言いました。
彼女もまた先生に「私もプロコフィエフの2番を弾く」と言いました。
すると先生は「駄目です。あなたはトロイメライを弾きなさい」と言いました。
周りの人はみんなが笑いました。
「トロイメライなんて子供でも弾ける曲じゃないか」
彼女は呆然としました。
そんな彼女に先生はこう言いました。
「あなたは勘違いをしています。ピアノは指で弾くものではありません。この言葉の意味を発表会までによく考えなさい」
彼女は驚きました。
迎えた本番、彼女はただ一点だけを想い、トロイメライを弾きました。
心を込めて弾く。
聴いていた聴衆が驚きました。
演奏が終わると皆が拍手喝采でした。
「ピアノは指で弾くものではない」
この言葉の本当の意味を彼女は分かった時でした。
この漫画を読んだのは私が大阪音楽大学でギターを学んでいた時でした。
当時は殆どこのお話しの真意が分かりませんでしたが、あれから20年以上経ち、人並みに失恋や失望、挫折、人間関係の崩壊を経験してこの話の真意が分かりました。
私にギターを教えて下さった大野朱美先生もきっと私に「ギターは指で弾くものではなく、心で弾くものだ」と教えてくれたのだとこの歳になってようやく分かりました。
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