理性の眠りは怪物を生む
18世紀、スペインを代表する画家フランシスコ・ゴヤ・イ・ルシエンテス (通称ゴヤ)は数々の名画を描きました。
皆さんも教科書などで一度は目にした事がある作品では、「裸のマハ」「着衣のマハ」だと思います。
この名画の解説は置いておき、今回はゴヤが描いた80枚の銅版画「ロス・カプリチョス」(邦訳: きまぐれ)から「理性の眠りは怪物を生む」をご紹介したいと思います。
18世紀のスペインは修道院の堕落、政治腐敗、不純異性交遊、など人々の堕落、無知などが横行しておりました。
ゴヤはそれを非常に不満に思っていたのだと推測します。
そしてその思いを80枚の銅版画にして世に出しました。
当時、宮廷画家として仕えていたゴヤの「ロス・カプリチョス」は瞬く間に反響を得ましたが、同時に反感を買い、すぐに回収されてしまいました。
私自身、ゴヤの銅版画集を買い、一枚一枚見ましたが、どの銅版画もメッセージが色濃く出ており、「いつの時代も人間は愚かな生き物だ」と感じざる負えませんでした。
時は経ち、ユダヤ系イタリア人の作曲家、マリオ・カステルヌォーヴォ・テデスコが、このゴヤの80枚の銅版画「ロス・カプリチョス」から24枚を選び、ギター独奏曲として発表しました。これが「ゴヤの絵による24のカプリチョス」です。24曲あります。
1曲目は「フランシスコ・ゴヤ・イ・ルシエンテス画家」と題された前奏曲になります。
非常に素晴らしい曲です。
ゴヤの自画像が曲のモチーフになっています。
ゴヤの目に注目してみましょう。これから後、23曲に秘められたゴヤの蔑んだ目、人間の愚かさを蔑んだ目で見ているゴヤだと思います。
そして私が現在練習している曲は第18曲「理性の眠りは怪物を生む」
寝ているのはゴヤ自身だと思います。周りにはフクロウ、ミミズク、山猫、蝙蝠など怪物が取り囲んでいます。
私的に意訳をすれば「理性が眠れば欲望が生まれる」
我々は普段、理性を持って生きています。しかし心の奥底では「他人から賞賛されたい」「お金が欲しい」「女からモテたい」「チヤホヤされたい」「先生ともてはやされたい」など欲望があります。
ゴヤは人間の最も醜い、いや、醜悪な部分を見事にこの一枚の絵に描いていると思います。
私はこの絵を見て、そして曲を聞いて練習を重ねました。
まだまだ完成にはほど遠いですが、この曲を練習して気付いた事が沢山あります。
その中でも最も強く感じた事は、
「私はこの曲と出会う為に今までギターを弾いて来たのだ」と思いました。
それほどまでにこの曲に「感動」というちっぽけな言葉では表現出来ない程、素晴らしい曲と出会ったと思って毎日練習を積み重ねています。
この曲は私の魂です。
このような思いに至った曲は人生で初めてです。
まだまだ完成には程遠いですが、今年はこの曲をこれからも練習したいと思います。
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